企業不祥事は、その企業の内部の従業員などからの通報をきっかけに明らかになることもあります。
一般的には、内部告発といわれますが、企業の違法行為を知った内部の従業員が、その企業から報復されることを恐れて黙認してしまうようになると、企業の違法行為による被害拡大を防止することができなくなってしまいます。
このような事態を避けるために、労働者が公益のために通報を行ったことを理由として、解雇等の不利益な取扱いを受けることがないように、ルールとして定められたものが公益通報者保護法です。
直近では、令和2年6月に改正され、令和4年6月1日に施行されました。

保護の内容

公益通報者保護法では、通報したことを理由として次のような不利益な取り扱いをすることが禁止されます。

  • 解雇:事業者が、公益通報をしたことを理由として労働者などを解雇した場合、その解雇は無効とされます。
  • 解雇以外の不利益な取扱いの禁止(降格、減給、訓告、自宅待機命令、給与上の差別、退職の教養、雑務への従事、退職金の減額・没収)
  • 損害賠償の制限(公益通報者をしたことを理由として、企業が公益通報者に対して損害賠償を請求することはできません)
  • 労働者派遣契約の解除(公益通報者が派遣労働者である場合、派遣先は、公益通報を理由として労働者派遣契約を解除することはできません)

改正の内容

主な改正内容は、以下の通りとなります。

①事業者の体制整備の義務化

事業者に対して、従業員などから事業者へ内部通報があった場合に、適切に取り扱うための仕組みを整備することを義務付けました(法第11条)。具体的な内容については、民間事業者向けのガイドラインが作成されています。
また、実効性の確保のための行政措置(助言、指導、勧告に従わない場合の公表)が導入されました(法第15・16条)。
さらに、事業者が内部調査等をする場合、その調査等に従事する者に、通報者を特定させる情報の守秘義務が設けられました(法第12条・21条)。これに違反した場合には、30万円以下の刑事罰となります。

②公益通報者として保護される範囲の拡大

通報者がより保護されやすくするために、労働者に加えて、退職者や役員が追加されました。
労働者には、正社員、派遣労働者、アルバイト、パートタイマーなどの方、公務員があたります。
退職者は、退職や派遣労働が終了してから1年以内の方が対象となります。
役員とは、取締役や監査役など、法人の経営に従事する方をいいます。

③保護される通報対象事実の範囲の拡大

保護の実効性を確保するために、刑事罰に加えて、行政罰が追加されました。

④行政機関等への通報の要件の追加拡大

通報を行いやすくするために、行政機関や報道機関へ通報し易くなりました。

⑤保護の内容の拡大

通報に伴う損害賠償責任の免除が追加されました(法第7条)。これにより、公益通報をしたことを理由として、事業者が公益通報者に対して、損害の賠償を請求することはできません。

公益通報者として保護されるには

公益通報者としての保護を受けるには、通報者が以下の事項に該当する必要があります。
詳しい内容は、各ページでご紹介いたします。