公益通報として保護されるには、定められた通報先へ通報する必要がありますので、どこへ通報しても公益通報として保護されるわけではありません。
公益通報者保護法では、通報先として①役務提供先等(1号通報)、②行政機関等(2号通報)、③報道機関等(通報対象事実の発生もしくは被害の拡大防止に必要と認められる者)(3号通報)の3つが定められています。
どの通報先から通報すべきかという通報の順序については、法律上定められておらず、どの通報先へ通報しても公益通報となり得ます。
もっとも、その通報が公益通報者保護法により保護されるかは、通報先ごとに定められた要件を満たす必要があり、外部通報の場合は内部通報の場合と比較して、要件が厳しくなっています。そして、外部通報の場合においても、行政機関等への公益通報(2号通報)より、報道機関等への公益通報(3号通報)による保護要件が厳しくなっています。そこでは、外部通報の場合は、通報により事業者の評判を低下させるおそれがあることが考慮されています。
そのため、基本的には、レポーティングラインを利用して事業者内部に公益通報をし、それでも是正されない場合には事業者外部への通報を検討することになると思われます。

1号通報先

役務提供先(通報者が役務を提供する先の事業者)又は役務提供先があらかじめ定めた者(グループ会社の共通の窓口、外部の弁護士や法律事務所が想定されています)が通報先になります。一般的な内部通報、というイメージにあたるものです。

2号通報先

通報の対象となった事実について処分又は勧告等をする権限がある行政機関が通報先となります。

3号通報先

事業者の外部が通報先となるものです。具体的には、通報対象事実の発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者とされています。
具体的には、報道機関、消費者団体、事業者団体、オンブズマン団体、公益通報者支援団体などが想定されています。

1〜3号通報として保護されるための要件

1号〜3号通報として公益通報者保護法による保護が認められるためには、以下の保護要件を満たす必要があります。

1号通報の場合

通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合であること

事業者内部への通報の場合には、外部通報の場合のように、事業者の評判が不当に害されるおそれはありません。
そのため、通報対象事実がまさに生じようとしていると思料している場合であれば、公益通報者保護法により保護されます。

2号通報の場合

通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合(✳︎)であること

又は

通報対象事実が生じ、若しくはまさに生じようとしていると思料し、かつ、次の事項を記載した書面(電子メール、通報フォームへの記入等を含む)を提出すること

  • 公益通報者の氏名又は名称及び住所又は居所
  • 当該通報対象事実の内容
  • 当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する理由
  • 通報対象事実について法令に基づく措置その他適当な措置がとられるべきと思料する理由
  • 当該通報対象事実について法令に基づく措置その他適当な措置がとられるべきと思料する理由

3号通報の場合

上記(✳︎)に加えて、一定の要件(法第3条3号)(以下の事項のいずれか)を満たす場合であること

  • 事業者内部(役務提供先等)又は行政機関に公益通報をすれば、解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由があること
  • 事業者内部(役務提供先等)に公益通報をすれば、通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由があること
  • 事業者内部(役務提供先等)に公益通報をすれば、役務提供先が通報者について知り得た事項を、通報者を特定させるものであると知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信ずるに足りる相当の理由があること
  • 役務提供先から事業者内部(役務提供先等)又は行政機関に公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求されたこと
  • 書面により事業者内部(役務提供先等)に公益通報をした日から20日を経過しても、通報対象事実について、当該役務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該役務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わないこと
  • 個人の生命若しくは身体に対する危害又は個人の財産(事業を行う場合におけるものを除く。)に対する損害(回復することができない損害又は著しく多数の個人における多額の損害であって、通報対象事実を直接の原因とするものに限る。)が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由があること

公益通報者の保護

上記の保護要件を満たして、公益通報をした者(公益通報者)は、以下の内容の保護を受けます。

①公益通報をしたことを理由とする、解雇の無効、その他不利益な取り扱いの禁止

②公益通報者が派遣労働者である場合には、公益通報をしたことを理由とした労働者派遣契約の解除の無効、その他不利益な取り扱いの禁止