公益通報として保護される通報の内容は、①役務提供先において②一定の法令違反行為が生じ、又はまさに生じようとしている旨であることが必要となります。
ただし、③不正の目的がある場合には保護されません。

①役務提供先

公益保護として保護される通報の内容は、役務提供先に関するものであることが必要です。
役務提供先とは、労働者や役員が役務を提供している事業者のことをいいます。具体的には、勤務形態やどういった方が通報するかに応じて、以下のような内容になります。

  • 勤務先で働いている場合:勤務先の事業者
  • 派遣労働者として派遣先で働いている場合:派遣先の事業者
  • 役員を務めている勤務先で働いている場合:役員を務めている勤務先
  • 勤務先・派遣先の事業者と取引先の事業者の請負契約等に基づいて当該取引先で働いている場合:取引先の事業者

②一定の法令違反

公益通報者保護法は、すべての不正事実を通報の対象とするものではありません。
公益通報者保護法では、公益通報の要件となる「通報対象事実」の範囲を定めています(法2条3項)。

対象となる法律違反のうち、最終的に罰則(刑罰・過料)規定が適用され得る行為

公益通報者保護法は、国民生活の安心や安全を脅かす法令違反の発生と被害防止を図る観点から、通報対象事実となり得る法律(対象法律)を、公益通報者保護法および国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律に限定しています。そのうえで、具体的な法律名を「別表に掲げるもの」と規定して規律しています。なお、対象法律は、令和5年10月1日現在で、500本の法律が該当します。

そのうえで、通報対象事実となるものは、対象法律の規定のうち、最終的に罰則(刑罰・過料)の規定が適用され得る行為になります。

直接罰則の対象となる行為

法3条2項1号は、通報対象事実の範囲に、対象となる法律違反が、当該法律中の罰則(刑罰・過料)規定が適用される得る行為である場合を定めたものです。
そうすると、対象法律ではない法律に違反する行為は、直接的には通報対象事実に該当しないことになります。
もっとも、対象法律ではない法律に違反する行為であったとしても、対象法律の違反行為と評価することで、公益通報者保護法で保護する場合も考えられます。
例えば、補助金の不正受給の場合において、補助金適正化法は対象法律ではありませんが、対象法律である刑法の詐欺罪(刑法246条1項)に該当すると評価し、刑法違反についての通報であり通報対象事実として公益通報者保護法により保護するような場合です。

最終的に罰則の対象となる行為

法3条2項1号は、通報対象事実の範囲には、対象となる法律違反のうち、処分に違反することが罰則の対象となる場合に、当該処分や当該処分の前提となる処分・勧告等の理由となる行為が含まれることを定めたものです。
そして、ここでいう処分は、命令、取消しその他公権力の行使にあたる行為を指します。

③通報の目的が不正の目的でないこと

不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的で通報した場合は、公益通報には該当しません。

公益通報者保護法第2条3項(通報対象事実)
3 この法律において、「通報対象事実」とは、次の各号のいずれかの事実をいう。
一 この法律及び個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として別表に掲げるもの(これらの法律に基づく命令を含む。以下この項において同じ。)に規定する罪の犯罪行為の事実又はこの法律及び同表に掲げる法律に規定する過料の理由とされている事実
二 別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場合における当該処分の理由とされている事実(当該処分の理由とされている事実が同表に掲げる法律の規定に基づく他の処分に違反し、又は勧告等に従わない事実である場合における当該他の処分又は勧告等の理由とされている事実を含む。)