セクハラに関しては、男女雇用機会均等法に規定されており、また、厚生労働省の指針により内容が類型化されています。

職場におけるセクハラとは、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること、と規定されています(男女雇用機会均等法第11条第1項)。

このように、セクハラとは、①職場であること、②労働者に対するものであること、③性的な言動であること、④労働条件につき不利益を受け、又は就業環境が害されるものであることを指します。そこで、それぞれについて説明します

①職場であること

「職場」は、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所をいいます。また、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行される場所については「職場」に含まれるとされます。そのため、出張先や取引先との打ち合わせ場所、顧客の自宅等なども、業務を遂行する場所であれば「職場」となります。

②労働者に対するもの

「労働者」には、正社員だけではなく、パートタイム・契約社員などの方も含まれます。

③性的な言動であること

「性的な言動」は、性的な内容の発言と性的な行動を指します。

(性的な内容の発言の具体例)
・性的な事実関係を尋ねる、性的な内容の情報(噂)を流す、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、個人的な性的体験談を話す
(性的な行動の具体例)
・性的な関係を強要する、必要なく身体へ接触する、わいせつな画像を配る・掲示する、強制わいせつ行為など

セクハラは、異性に対するものだけではなく、同性に対するものも該当します。また、被害を受ける者の性的指向や性自認に関わらず、「性的な言動」であれば、セクハラに該当するとされます。

④労働条件について不利益を受けること、又は就業環境が害されること

セクハラは、対価型セクハラと環境型セクハラに分類されます。
対価型セクハラは、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けることをいいます。
他方、環境型セクハラとは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快となったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

セクハラに該当するかは、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準として判断します。

セクハラ研究のパイオニアといわれるジョン・プライヤー教授は、セクハラをする人の共通の特徴として、①共感力の欠如、②伝統的な性別の役割分担を信じている、③優越感・権威主義であることを挙げたうえで、セクハラを行う人をとりまく環境も大きく影響していると指摘しています(白川桃子「ハラスメントの境界線」p90)。このように考えると、セクハラ防止にあたっては、実際にセクハラをする人に対して、周囲がその言動はセクハラだと認識する必要があります。つまり、セクハラについての従業員全体での共通認識が必要となるのです。
セクハラ防止のためには、このような事情も考慮した研修を実施することが重要となります。