雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会
令和6年2月以降、厚生労働省の雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会において、ハラスメントについての検討が行われています。
今回は、この検討会で言及されている、カスタマーハラスメントの現状についてご紹介します。
カスタマーハラスメント対策企業マニュアルの策定
カスタマーハラスメント(顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為)については、令和2年1 月にパワハラ防止指針(事業者が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等)において、事業者が取り組むことが望ましい事項として明記されました。その後、令和4年には、カスタマーハラスメント対策企業マニュアルが策定され、業界団体や事業者において対応マニュアルに沿った対応がみられています。
カスタマーハラスメントの実情
誰がハラスメントをしているのか
厚生省の令和5年度調査によると、カスタマーハラスメントの行為者は、
・顧客等(患者またはその家族等を含む):82.3%
・取引先等の他社の従業員・役員が:2.6%
となっており、専ら顧客等からのハラスメントが占めています。
ハラスメントの内容はどのようなものか
厚生省の令和5年度調査によると、過去3年間に受けた勤務先で顧客等からの著しい迷惑行為の内容(複数回答)は、
・継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動(頻繁なクレーム、同じ質問を繰り返す等):57.3%
・威圧的な言動(大声で責める、反社会的な者とのつながりをほのめかす等):50.2%
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の要求等):33.1%
となっており、継続的・執拗な言動と威圧的な言動が大部分を占めています。
ハラスメントを受けた労働者の心身への影響
顧客等からの著しい迷惑行為を受けたことによる心身への影響は、全体として
・怒りや不満、不安などを感じた:63.8%
・仕事に対する意欲が減退した:46.1%
となっており、ハラスメントを受けた頻度が多くなるほど、「眠れなくなった」、「会社を休むことが増えた」、「通院したり服薬をした」など、深刻な心身への影響が高くなっています。
労災認定基準等の改正
令和5年9月には、心理的負荷による精神障害の労災認定基準が改正され、業務による心理的負荷表の具体的出来事に、
「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)が規定されました。
また、国家公務員に関しても、令和6年2月に精神疾患等の公務上災害の認定指針が改正され、公務に関連する負荷の分析表の出来事例に、「組織外の者から業務に関連して迷惑行為を受けた」が規定されました。
企業の対応状況
厚生労働省の令和5年度調査によると、顧客等からの著しい迷惑行為に関する取組みをしていない企業は、
・99人以下の企業:73.4%
・100〜299人の企業:62.0%
・300〜999人の企業:48.9%
・1000人以上の企業:73.8%
となっています。
もっとも、カスタマーハラスメントを経験したか否かに関して、カスタマーハラスメントに積極的に取組んでいる企業では12.8%がカスタマーハラスメントを経験しているのに対して、カスタマーハラスメントにあまり取組んでいない企業では、23.1%がカスタマーハラスメントを経験しているため、カスタマーハラスメントに積極的に取組んでいる企業の方が、あまり取組んでいない企業と比較して、カスタマーハラスメントの被害は少ないといえます。
ハラスメント予防・解決のための取組みを進めたことによる副次的効果
厚生労働省の令和5年度調査によると、ハラスメントの予防・解決を取組みを進めたことによる副次的効果として、
・職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる:39.9%
・会社への信頼感が高まる:35.5%
・休職者・離職者が減少する:24.4%
・管理職が適切なマネジメントができるようになる:24.2%
が挙げられています。
この数値は、調査への回答企業の全体での割合となりますので、企業の規模によって結果が多少異なります。
もっとも、ハラスメントへの予防・解決のための取組みを進めることは、職場環境・従業員の健康等の面で良い結果が生じるといえます。
対策について
以上が、厚生労働省の雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会において言及されているカスタマーハラスメントの現状となります。
カスタマーハラスメントへの対応は、実際の現場での対応が判断が難しいですので、カスタマーハラスメントと感じられた場合には、ご相談ください。