フリーランス・事業者間取引適正化法Q&A
フリーランス新法は、令和5年4月28日に可決成立し、同年5月12日に公布されました。そのうえで、令和6年11月1日に施行されます。
これにより、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者は、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払い、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられることになります。
そして、厚生労働省から、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)Q&Aが発表されていますので、ご紹介いたします(令和6年12月18日時点)。
このQ&Aは、この法律の条項ごとに、想定される問題点をQ&A形式で説明するものです。
中途解約等の事前予告(法第16条1項)
特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除をしようとする場合には、その契約の相手方である特定受託事業者に対して、少なくとも30日前までに、その予告しなければなりません(法第16条1項)。
そのため、特定業務委託事業者は、6ヶ月以上の期間行う業務委託に係る契約を解除する場合、解除日(不更新の場合は契約満了日)の少なくとも30日前までに、その旨の予告を行わなければなりません。予告日(当日)から解除日の前日までの期間が30日間確保されている必要がありますので、例えば8月31日に解除する場合には8月1日までに予告が必要です(Q&A106)。
もっとも、仮にこの中途解除等の事前予告を行わなかった場合であっても、解除等の効力はこの法律に基づいて判断されるものではなく、例えば、契約の解除の効力や解除に伴う損害賠償請求等については、民事上の争いとして司法による判断等により解決が図られることになります(Q&A107)。
中途解除等の理由開示義務(法第16条2項)
特定受託事業者が、第1項の予告がされた日からその契約が満了する日までの間において、契約の解除の理由を特定業務委託事業者に請求した場合には、その特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対して、遅滞なくその理由を開示しなければなりません。
理由の開示は、①書面を交付する方法(本法省令第5条第1項第1号)、②ファクシミリを利用してする送信の方法(同項第2号)、③電子メール等の送信の方法(特定受託事業者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限ります。)(同項第3号)のいずれかの方法により行われなければなりません。
ただし、第三者の利益を害する場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りではありません(同項ただし書)
ここで、「第三者の利益を害するおそれがある場合」とは、契約の解除の理由を開示することにより、特定業務委託事業者及び特定受託事業者以外の者の利益を害するおそれがある場合をいいます。
例えば、顧客からのクレームに基づき解約したことを告げた場合に、当該理由を開示すると顧客への報復の蓋然性が高いと認められる場合が挙げられます。
また、「他の法令に違反することとなる場合」とは、契約の解除の理由を開示することにより、例えば、法律上の守秘義務に違反する場合などをいいます。
例えば、 法令上、守秘義務が課されている事業等を営む特定業務委託事業者が、解除の理由を開示することで法違反となる場合 などが挙げられます(Q&A114)。
申出等(法第17条)
特定業務委託事業者から業務委託を受け、又は受けようとする特定受託事業者は、この章の規定に違反する事実がある場合には、厚生労働大臣に対し、その旨を申し出て、適当な措置をとるべきことを求めることができます(法第17条1項)。
そして、厚生労働大臣は、この申出があったときは、必要な調査を行い、その申出の内容が事実であると認めるときは、この法律に基づく措置その他適当な措置をとならければなりません(同条2項)。
さらに、この申出及び求めをしたことを理由として、不利益な取り扱いをすることが禁止されます(同条3項)。
違反した場合等の対応
公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務委託事業者に対し、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができます(法第8条、第9条、第11条、第18条〜第20条、第22条)。
また、命令違反及び検査拒否等に対しては、50万円いかの罰金に処せられます(法第24条1項)。
さらに、法人に対して両罰規定が定められています(法第25条)。