フリーランス・事業者間取引適正化法Q&A

フリーランス新法は、令和5年4月28日に可決成立し、同年5月12日に公布されました。そのうえで、令和6年11月1日に施行されます。
これにより、個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者は、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払い、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられることになります。

そして、厚生労働省から、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)Q&Aが発表されていますので、ご紹介いたします(令和6年9月19日時点)。
このQ&Aは、この法律の条項ごとに、想定される問題点をQ&A形式で説明するものです。

ハラスメント対策に係る体制整備(法第14条)

特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者に対するハラスメント対策として、その者からの相談に応じ、適切に対応するるために必要な体制の整備その他必要な措置をこうじなければなりません(法第14条1項各号)。

この規定は、特定受託業務従事者が、その業務委託に起因してハラスメントを受けやすい立場にあることを踏まえ、特定業務委託事業者が特定受託業務従事者に対するハラスメント対策を講じることにより、特定受託業務従事者がその有する能力を発揮しつつ業務を継続できる環境を整備することを目的として設けられたものです。なお、ここで 「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である個人及び特定受託事業者である法人の代表者をいいます(Q&A97)。

そして、同条に規定された「業務委託に関して行われる」とは、特定受託業務従事者が当該業務委託に係る業務を遂行する場所又は場面で行われるものをいい、当該特定受託業務従事者が通常業務を遂行している場所以外の場所であっても、当該特定受託業務従事者が業務を遂行している場所については含まれます。

また、業務を遂行する時間以外の「懇親の場」、業務を遂行する場所への移動中等であっても、実質上、業務遂行の延長と考えられるものは「業務委託に関して行われる」ものに該当しますが、その判断に当たっては、業務との関連性や参加者など、参加や対応の目的や性質を考慮して個別に行う必要があります。

「業務委託に関して行われる」とされる具体例として、

・ 取引先の事務所
・ 顧客の自宅
・ 取引先と打合せをするための飲食店
・ 同じ業務を遂行する関係者の打ち上げ
・ 特定受託業務従事者との電話やメール 等

が挙げられます(Q&A98)。

体制整備の具体例

特定業務受託事業者に対する業務委託におけるハラスメントの体制整備のため、特定業務委託事業者は、

(1)方針の明確化及びその周知・啓発
(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
(4)併せて講ずべき措置

を実施する必要があります。


具体的には、

(1)方針の明確化及びその周知・啓発として

① 業務委託におけるハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、業務委託に係る契約担当者等を含む労働者に周知・啓発すること。
②業務委託におけるハラスメントの行為者は、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、業務委託に係る契約担当者等を含む労働者に周知・啓発すること。


(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備として

③相談窓口をあらかじめ定め、特定受託業務従事者に周知すること。
④相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、ハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。


(3)業務委託におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応として

⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
⑥事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
⑦事実関係の確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
⑧再発防止に向けた措置を講ずること。


(4)併せて講ずべき措置として

⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者及び特定受託業務従事者に周知すること。
⑩相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局に申出をしたことを理由として、契約の解除その他の不利益な取扱いをされない旨を定め、特定受託業務従事者に周知・啓発すること

が挙げられます(Q&A102)。

相談窓口をあらかじめ定め、特定受託業務従事者に周知すること

特定業務委託事業者は、相談窓口の設置として

・外部の機関に相談への対応を委託する
・相談に対応する担当者をあらかじめ定める
・相談に対応するための制度を設ける

といった対応などが考えられます。

また、相談窓口を特定受託業務従事者に周知する方法として、

・業務委託契約に係る書面やメール等に業務委託におけるハラスメントの相談窓口の連絡先を記載する
・ 特定受託業務従事者が定期的に閲覧するイントラネット等において業務委託におけるハラスメントの相談窓口について掲載する

といった特定受託業務従事者に確実に周知できる方法とすることが必要となります(Q&A102)。

なお、既に自社の従業員向けに職場のハラスメントに関する相談窓口を設置している場合は、その窓口がフリーランス法14条に基づく措置義務の内容を満たすものとなっているかを確認した上で、特定受託業務従事者にも利用可能とする方法も考えられます。
新しく特定受託業務従事者向けのハラスメントの相談窓口を設置するか、既に設置している相談窓口を特定受託業務従事者も利用可能とする対応にするか、いずれの方法であっても、特定受託業務従事者に対して相談窓口を周知し、特定受託業務従事者が利用しやすい体制を整備しておくことが必要となります(Q&A103)。