改正概要

令和5年5月10日、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)の一部を改正する法律が成立し、同月17日に公布されました。
今回は、この改正についてご紹介します。

主な改正事項は

① 事業者の自主的な取組の促進としての確約手続の導入

② 違反行為に対する抑止力の強化:課徴金制度の見直し、罰則規定の拡充

③  円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等:適格消費者団体による開示要請規定の導入

となります。

①事業者の自主的な取組の促進

確約手続の導入

確約手続は、不当表示等に該当する行為が行われている疑いがある場合において、事業者が自主的に一定の措置を講ずることで違反行為を認定せず、不利益処分(措置命令・課徴金納付命令)を課されない制度をいいます。
この制度は、違反行為に関して、事業者において処分を受けないという地位を保障することで、自主的な是正への取り組みのインセンティブを確保し、早期の是正を目的とするものです。

手続きの流れとしては、調査の開始から法定の弁明の機会の付与の通知を行うまでの間に、消費者庁が、違反被疑行為について確約手続きに付すことが適当であると判断したときに、違反被疑行為者に対して確約手続通知を行います。その際に、消費者庁は、確約手続通知を行う時点で把握している事実に基づき、違反被疑事実の概要及び違反する疑いのある又はあった法令の条項を確約手続通知の書面に記載します。

この通知を受けた事業者は、違反被疑事実やその影響の是正のために必要な措置を自ら策定・実施しようとするときは、その計画を作成して、その通知を受けた日から60日以内に確約認定申請をする必要があります(景品表示法第27条第1項又は第31条第1項)。

消費者庁は、事業者からの確約認定申請を受けた場合、是正措置の内容が十分であり、かつ確実に実施されると見込まれるものであると認めるときは、その認定をし、措置命令・課徴金納付命令を行わないことになります。

②違反行為に対する抑止力の強化

課徴金制度の見直し

課徴金納付命令の実効性確保のため、課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握することができない期間における売上額を推計することができる規定が設けられました(景品表示法第8条第4項)。
課徴金納付命令の額は、課徴金対象行為を行った期間の商品又は役務の売上額の100分の3と規定されていますが(景品表示法第8条第1項)、データの未整備や帳簿の欠落により、売上額の調査に時間を要する場合もあるため、課徴金の計算となるべき事実を把握することができない期間における推定規定が規定されました。

また、違反行為から遡り10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者に対しては、課徴金の額を加算(1.5倍)する規定が設けられました(景品表示法第8条第5項・6項)。
課徴金納付制度は、違反行為に対して金銭的な不利益処分を課すことで違法行為を抑止することを目的とするものです。もっとも、違反を繰り返す事業者にとっては、課徴金を納付してもそれを上回る金銭的利益を得ており、より強い抑止が必要と考えれらるため、課徴金算定率が4.5 %となります。

罰則規定の拡充

これまで、不当表示がなされた場合には、措置命令が行われ、この命令に従わなかった場合には罰則が適用されます(景品表示法第36条)。
これに加えて、優良誤認表示や有利誤認表示に対して、直接罰する(100万円以下の罰金)規制を新設することで、より強い抑止手段を導入しました。

③円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等

適格消費者団体による開示要請規定の導入

適格消費者団体が、一定の場合に、事業者に対し、当該事業者による表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請することができるとともに、事業者は当該要請に応ずる努力義務を負う旨の規定が新設されました(景品表示法第35条)。

消費者契約法上の適格消費者団体は、事業者が、優良誤認表示・有利誤認表示を現に行い又は行うおそれがあると気は、当該事業者に対し、当該行為の停止等を請求(差止請求)することができます(景品表示法第34条)。
この差止請求のためには、当該表示の通りの効果や性能がないことを立証する必要があるため、その実効性を確保すべく、事業者が現にする表示が優良誤認表示に該当すると疑うに足りる相当な理由があるときは、当該事業者に対して、その理由を示して、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を開示するように要請できることとされました。

以上が、主な改正内容となります。
なお、今回の改正では、課徴金の返金措置に関していわゆる電子マネー等が利用可能となったことや、措置命令等における送達制度の整備・拡充も行われています。
また、確約手続きの運用に関しても、一定の基準が示されていますので、詳しくお知りになりたい場合には、弁護士へのご相談をおすすめします。