デジタル空間における模倣行為防止
2023年、知的財産の分野におけるデジタル化の進展を踏まえて、不正競争防止法の改正を含む「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が可決成立しました。
今回は、この改正のうち、デジタル空間における模倣行為の防止をご紹介します。
不正競争防止小委員会による検討
2023年3月、産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会は、デジタル社会に伴う社会経済を取り巻く情勢の変化を踏まえて、不正競争防止法の内容について検討しています。その検討内容は、この委員会から「デジタル化に伴うビジネスの多様化を踏まえた不正競争防止法の在り方」として提言されました。
そして、この提言内容を踏まえて、上記の不正競争防止法等の一部を改正する法律が可決成立しました。
無体物としての商品の保護
不正競争防止法では、第2条において、不正競争となる行為を規定しています。そこでは、混合惹起行為や、著名表示防用行為といった営業上の信用を保護するものや、営業上の秘密のように人の創作活動を保護するものもあります。
今回の改正では、商品の概念に関する内容を含んでいます。
これまで、不正競争防止法条で規定する「商品」の概念には、有体物のみ含むという考え方と、無体物も含むという考え方の両方が存在していました。
もっとも、「商品」に有体物しか含まないと考えると、無体物であるデジタルの商品に不正競争防止法第で不正競争として規定している他人の商品形態を模倣した行為の提供(第2条3号)が活用できない可能性があることから、上記の提言においては、無体物の取引価値が増加していることを踏まえ、無体物である「商品」にも同号の保護が及ぶ旨を明確化すべきとの考え方が提示されました。
また、経済産業省知的財産政策室編「逐条解説不正競争防止法 令和6年4月1日施行版」には、不正競争防止法条の目的たる公正な取引秩序の維持、確立の観点からすれば、現在の情報化社会においては、有体物と無体物とで解釈をことにする必要はないため無体物も「商品」に含まれると明記されました。
改正前の不正競争防止法第2条3号は、不正競争として、「他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し又は輸入する行為」と規定していました、これに「電気通信回線を通じて提供する行為」が、付け加えられました。
また、関連する条文についても、同様に「電気通信回線を通じて提供する行為」が付け加えられました。
改正による規制対象
今回の改正により、リアル空間での他人の商品形態を模倣した商品を、デジタル空間上で提供する行為や、デジタル空間上の他人の商品形態を模倣した商品をデジタル空間で提供する行為が規制の対象となります。
このように、今回の改正で、デジタル空間条の商品の保護が強化されたことになります。